本当はアレなんだ日記

個人ブログです。ツイッター、フェイスブックで言うにはちょっとアレかな~みたいなこと。

新国立競技場について思うこと

最近、SNSを中心に新国立競技場に関する議論を見るにつけ、いつも何か発言したいと思ってしまう。自分が建築家として尊敬していた人が、自分と違う意見をかなり過激に発言していたりして、「うわ…幻滅」と思うこともしばしば。そういう意見の食い違いを受け止め、建設的に反論できるのが理想だけど、そのたび頭でいろいろ考えて、文字にも書いて、投稿しかけて、やっぱりやめてしまう。
 
まず、自分はどちらかというとザハ案には反対だが、100%改修案に賛成というわけでもない。コンペやり直しができたらいいと思っているが、現実的なところはわからない。ともかくこれは覚え書きだから、なぜザハ案に反対かを記しておきたい。
 
ザハ案について、特にコンペ案の良さが実施設計案では失われてしまったから、もとのザハ案をなんとしても実現すべきだという意見をよく聞く。実際に景観が破壊されるか、運営がうまくいくか、技術的に可能か、といったところはよくわからないから、お金の問題や景観の問題はこの際置いておくとして、自分はその案のバブリーさが問題だと思う。
 
自分は平成生まれだが、2020年ごろには(具体的にはデリケートな問題だが)平成を総括するということがどうしても出てくるはずだ。実際におととしには「平成史」という本も出版された。
ところでザハが震災後に「みんなの家」というテーマで描いたスケッチは、CGの帯が重なり合ったとても抽象的なものだった(他の多くの建築家は、被災者の視点で比較的現実的な提案をしているように思う)。成熟社会として抽象論ではなく現実的に良いデザインを考えていくというのが平成時代に養われた感覚であったのに、それをバブル的なイメージに回帰して良いのかどうか。「日本を元気にするデザイン」というのも抽象的すぎて、よくわからない。それがバブル的なものに回帰するということなら、自分が生きてきた平成は何だったんだろう。単に暗い失われた時代だったのだろうか。どでかい派手なものをつくれば、時代は明るくなるというのは違う。失われた30年であっても、平成世代はそれなりに明るくやってきたと思うのに、ザハ案はそれをなかったことにするような案な気がする。
 
もうひとつ、ザハ案賛成派の意見をいくつか聞いたが、「(不透明な部分があったにせよ)コンペで決まったんだから反対せず建てるべきだ!」というのには納得できない。反対運動は民主主義としてあってしかるべきことだ。「反論が遅すぎる」という意見には、確かにそうだと思うし、オリンピックが決まってから慌てて言い出した印象はある。でも原発だって(不透明にせよ)民主的な手続きを経てできたもので、震災があったからって今更なにが原発反対だよ、と言うのと同じだ(まあそう言う人もいるが)。
 
また、藤村龍至の意見は賛成派の中でもかなり冷静なものだと思うが、今回の案が失敗に終わる可能性を認めたうえで「今回のコンペでの失敗は次に生かせる」と言うのには納得できない。それに「建築は簡単には建て替えられないんだから、慎重にやれよ」という、当たり前に建築学科で教わってきたはずのことに反している。
「コンペに勝っても白紙にされてしまうと、コンペへの意欲がなくなる」というのは確かにそうだが、これは建築家の保身じゃないかと思う。それだけ影響力のある大きいものをつくるわけだから。一般の人のもつ、「建築家はエゴイスト」というイメージは、やはり平成になって、とくにここ10年くらいでずいぶん変わったように思う。でもこういう意見に賛同する人が多いのを見ると、やっぱり建築家はエゴイストなんだと感じてしまう(もちろん「建築家はエゴイストであってしかるべきだ」という意見もあるが)。
 
で、ザハ賛成派は、若手の建築家を中心にある程度いるように思うが、SNS上でばらばらに愚痴を言っているだけで、好みの意見にいいねをつけているだけで、何も結束していない。そのぶん、反対派の方に分があると思う。まあ放っておいても改修案は望み薄だし、デモのような活動を野暮だと思っているのかもしれない。でも、あまり賛成派と反対派が直接激論を交わしている場面を見たことがなくて、Facebookでもシンポジウムでも、一方的に集まっているだけな気がする。建築家協会が要望書を出したり、シンポジウムを開いたりしているんだから、賛成派だって「ザハ案を守れ!」みたいな署名活動でもしたらどうかと思うんだけど。田中元子さんがFacebookで「若者は、おじさんみたいな声の上げ方、しないんだよ。」と言っていたが、結局逃げてるだけなんじゃないか?対立軸を煽るなということかもしれないけど、それでも、対立する部分があるんだから(2項対立ではなくて)運動にしていかないとと思う。
 
ということで、今度解体反対のデモがあるそうなので、参加してみてもいいかなと思っている。自分も口だけになってはだめだから。
 
こういう記事はすぐ古くなるからとりあえずこれは2014年6月14日時点での考えだと記しておきたい。認識に間違いがあるかもしれないし。優柔不断だから考えが変わったらごめん。今後も柔軟に多くの意見を取り入れて考えをブラッシュアップしていきたい。